学習工学とは

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○学習工学に関する小論1: 「学習」への工学的アプローチ

○学習工学に関する小論2:「学習」の「工学」とは

「学習」を対象とした「工学」としての「学習工学」が成立するのかどうかを考えてみる.この言葉が力を持つためには,「教育」との違い,「科学」との違い,さらには,「eLearning」との違いを明確にできなければならないであろう.

「教育」には,学習者と教授者の二つの主体が現れる.教育を受けて学習する学習者はもちろん主体である.また,何を意味ある学習とするか,どのように学習するのかを規定する教授者も,十分主体としての役割を果たしている.教育は,この二つの主体が関係する非常に複雑な現象といえる.

これに対して,「学習」の主体は,学習者のみと考え,学習者以外のものを学習者の置かれている環境,と考えることができる.このように考えれば,学習者は学習者が置かれている学習環境とのインタラクションを通して,学習していくこととなる.この際,この学習環境に教授者が存在するかもしれないが,学習という観点からすれば,本や実験環境,などと同様に環境の一部である.

教育においては,一方の主体である教授者の観点は切り離せない.したがって,教育という現象をマクロに見ることが重要となる.これに対して,学習においては,個々の学習過程が大きな問題となる.したがって,ミクロな視点が非常に重要となる.

学習者の学習過程,あるいは問題解決過程,といったディテールに興味を持った場合,教育という観点からは些細な事柄と捉えられてしまう傾向にあるが,学習という観点ならすれば,まさしくそれらが本質であるということになる.ここに,わざわざ「教育」という言葉ではなく,「学習」という言葉を用いる意義があると考えている.

「科学」ではなく「工学」であるゆえんは,「学習を促進する技術」を用いることで,「新しい形態の学習」を生み出すことに焦点を当てている点である.インタラクションと知識の表現と蓄積のツールであるコンピュータを用いることで,これまでできなかった形の学習が実現可能に意なると希望を持っている.コンピュータは,分析の道具ではなく,学習を促進する道具となる.また,「技術」ではなく「工学」であるのは,学問体系の存在をそこに見ているからである.

eLearningは,この言葉の意味的には,学習工学のアプリケーション,であるのが自然であったように思う.しかしながら,現状は,コンピュータの情報送信の機能がクローズアップされており,インタラクションは十分に活かされているとはいえない.このインタラクションを活かすことを可能にすることに焦点を当てようというのが,学習工学といえる.

学習科学でも,教育工学でも,eLearningでも適切に表せない,「学習工学」という研究分野が,非常に大きなポテンシャルを持って存在している.この分野をうまく見つけ出すことが,本プロジェクトの目標である.