(更新:2011/12/12)
広島大学大学院工学研究科 博士課程前期 情報工学専攻
経歴
平成21年度 新居浜高等専門学校 卒業
平成22年度 広島大学工学部第二類入学
平成23年度 広島大学工学部第二類 情報工学課程卒業
平成24年度 広島大学大学院工学研究科 博士課程前期入学
研究内容
キットビルドマップとは、概念マップのキーワードを統一することにより、マップの自動診断を可能としたものである。
概念マップとは、2つ以上の概念(ノード)とそれらの関係(リンク)よって意味構造を表した図的表現である。
概念マップを作成することにより、学習者の理解を外化・共有が可能となり、また知識や理解の整理活動としての学習効果も期待される。
しかし一般的な概念マップは、学習者によってキーワードの選択を行うため、作成されたマップを診断することは教授者の負担の点から困難であった。
この問題を解決するため、教授者が全ての学習者に対して統一されたノード・リンク(キット)を提供し、組み立てさせる(ビルドさせる)ことで、計算機による自動診断を可能としたものが、キットビルドマップとなる。
キットビルドマップを利用した教授者・学習者間のインタラクションは以下の手順によって行われる。 (キットビルドマップについてさらに詳しく知りたい方⇒こちらのHPへ)
(1) 教授者が学習者に理解させたい情報を持つマップ(ゴールマップ)を準備
(2) ゴールマップを分解して、キットを用意
(3) 学習者がキットを組み立て、学習者の理解状況を表したマップ(学習者マップ)を作成
(4) 学習者マップとゴールマップを比較することでシステムにより診断
ゴールマップとの比較により診断された差分(学習者マップにおける誤り)を対象とし、その差分に基づいた授業を行うことで、学習者の持つ誤った理解に対してフィードバックを行うことが可能となる。
先行研究ではこの一連の流れにより、教授者・学習者間のインタラクションを実現してきた。
学習者マップ同士を比較することにより、学習者間の理解の差分を外化・共有することができる。
本研究では、学習者マップ間の差分に対して学習者間で議論・再検討を行わせることで、学習者間でのインタラクションを成立させることを目指す。
学習者間で議論・再検討を行わせるためには、お互いのマップを見せ合い、その差分を抽出させる必要がある。
しかし既存のシステムは、デスクトップPC環境で動作させることを想定したシステムであるため、PCが近くに設置された学習者同士でしか、議論等を行うことができなかった。
その問題を解決するため、Androidメディアタブレットを
用いてモバイル環境を構築し、この環境で動作する新システムの開発を行った。
システムを広島大学附属小学校の理科の授業で使用してもらい、学習者間でマップを利用した議論を行わせた。
まず学習者個人の知識でマップの作成をさせた(20分).
その後学習者マップの作成が完了してから,学習者に周りの人達と自由に話し合いをさせ,もし自分の意見が変わった場合はそれに合わせて自分の学習者マップを変化させるように促した.
話し合い前後のマップスコアを右に示す。
授業の結果から、学習者間で議論させることで、学習者の理解に近づいてゆくことが分かった。
しかしながら、本研究の目的である「自分の理解を説明する活動」だけでなく「相手のマップをコピーする活動」も行われていた。したがってメタ認知活動による効果は期待できない。
今後の課題として、説明活動を促進させるため、
学習者の理解状況を考慮したグループ編成
学習者間のマップの差分の明示
の2つの機能を実装し、学習者間インタラクションによる学習効果を期待する。
● 参考文献
Novak, J.D., & Canas, A.J.: “The Theory Underlying Concept Maps and How to Construct Them”,Technical Report IHMC CmapTools,(2006)
福田裕之,山崎和也,平嶋宗,舟生日出男:“Kit-Build式概念マップによる学習内容の構造的理解促進法”,人工知能学会全国大会(第24回)1E3-OS7-7(2010)
山崎和也,福田裕之,平嶋宗,舟生日出男:“Kit-Build方式による概念マップを用いたインタラクションとその実験的評価”,人工知能学会全国大会(第24回)2F1-2 (2010)
山崎和也,福田裕之,平嶋宗,舟生日出男:“概念マップのインタラクティブ化―Kit-Build方式の実装と実験的評価―”,教育システム情報学会 第34回 全国大会講演論文集,pp.462-463 (2009,08)