中川 響

(a)研究テーマ

「音楽リズム課題の課題間構造分析に基づく段階的演習支援システムの設計・開発」

(b)研究概要

音楽リズムの学習において,目標とするリズムをどうしても正確に演奏できない,という状態がしばしば発生する.このような状態に対する解決策として.目標のリズムを少しだけ簡単にしたリズムを練習することで習得の足掛かりとする,ということが考えられる.リズムを簡単にするには,(1)自分の演奏でどこが間違っているか把握する,(2)間違いに対してリズムを適切に変化させる,という2点が必要である.これらは初学者が自ら行うには難しいため,これらをシステムが行うことによる支援が有効であると考えられるが,(2)を行うためのシステマティックな方法は確立されていない.そこで本研究では,音楽リズムにおける基本的な課題を対象としてリズムの簡単化および複雑化を定式化することで,学習者の間違いに対してリズムを適切に変化させる機能を計算機上に実装し,その機能を用いた演習支援システムを設計・開発した.

(c)研究内容

(c-1)音楽リズムの分析

本研究で扱うリズムと,リズムを変化させる最小の操作4つを定義した.

(c-2)難しさの要素の定義

リズムの変化に伴って変化する難しさの要素3つを定義した.

(c-3)リズムの簡単化の定式化

学習者が間違えた音符の直前を簡単にすることで正確なタイミングでの演奏を支援できると考え,状況に応じた難しさの要素を減らす操作をリズムの簡単化と定義した.

(c-4)システム開発

学習者が間違えて演奏した場合に,次に取り組むべき簡単化したリズムを生成して提示する演習支援システムを開発した.音楽経験者を対象にシステムの評価実験を行い,今後は初学者を対象にした利用を目的に改良していく予定である.

(d)参考文献

[1]青島広志:“究極の楽典―最高の知識を得るために”,全音楽譜出版社(2009)